AceWeekなのでアロマンティックのお話2
社会人になった。いわゆる結婚妊娠出産の適齢期になって焦りはじめたが、それでも婚活をする気になれなかった。そして「なぜ私は恋愛や結婚のためにみんながしている当然の努力が出来ないのか?」と悩み始めた。とにかく行動した気になりたくてマッチングコミュニティに登録した。
このコミュニティがジェンダーやフェミニズムに関心がある人が多いコミュニティで、個人間のやりとりよりも全体に向けた発信が多く、情報交換のような投稿もある少し変わったコミュニティだった。そこでメンバーの1人が「SOGI(性自認や性的指向)をインターネットで診断できる」とあるサイトを紹介していた。
私は自分をシスヘテロだと信じて疑っていなかったので、試しにやってみようくらいの気持ちで診断した。結果は「あなたはアロマンティックでヘテロセクシャルです」と出た。感想は「まさか!」という気持ちと「どうりで!」という気持ちがきれいに半々だったと思う。
「まさか!」は「まさか自分が性的マイノリティ当事者なんて!」のまさか。今までずっとマジョリティを自認して生きてきたので、単純に戸惑った。アセクシャルは知ってたけど、アロマンティックはその診断結果で初めて知った。
自分が当事者…しかもマイノリティの中でもさらにマイノリティなアロマンティック……ドマイナー属性じゃん…まさか……のまさかだった。
「どうりで!」は「どうりで疎外感や違和感を抱くと思っていた!」のどうりで。ずっと漠然としたなんとも言えない疎外感や「自分、なんか変じゃない?」というぼんやりした違和感、というより自分自身に対する異物感を抱いていた。社会や集団の中で、自分は異物なんじゃないか、なんか違うんじゃないか、みたいな感覚があって、それらに対する「どうりで!」だった。そりゃそんなドマイナーな属性だったら疎外感も異物感も抱くわ!とめちゃくちゃ納得した。
この納得には救われたというか、楽になった感覚が強烈にあった。あの違和感は間違ってなかったんだ!っていうスッキリ感。
サイトの解説は読めば読むほど自分の感覚と一致していて、「あ〜こりゃ私アロマンティックですわ」とさらに納得は深まった。まるで生まれて初めて名前をもらったみたいな、今まで自分がいたフロアは実は私向けの場所ではなくて、別の場所にうつって良いのだと出口を見つけたような気持ちだった。
無理してここにいなくても良いのだと言われた気がした。
私は気持ちが浮かれていて、私のジェンダーアイデンティティは文字通り地に足がついていなかった。
でも30年近く異性愛者を自認していた感覚は当然すぐには消えなくて、最初の頃はマジョリティとしての視点や考え方とマイノリティとしての自意識が7:3くらいだった。
1年経ち2年経ち、アロマンティックアセクシャルにも色々種類がある(この表現もまた語弊がある)ことを知って、いま私の自意識はマジョリティ:マイノリティ=5:5くらいだと思う。
今のところ、私は自分をリスロマンティック(片思いはいいけど両思いは嫌)気味で、ヘテロセクシャル(異性に性的な関心を抱く)&エーゴセクシャル(性的接触の当事者にはなりたくないが性的なことへの関心はある)だと自認している。今後変わるかもしれないし、変わらないかもしれない。こういうのは流動的なものだし、知識が増えればよりしっくりくる自認が見つかるかもしれないけど、それは別にそれまでの自認が間違っていたとか正しくなかったとかではない。なによりも当事者が納得してしっくりくることが第一だと思うので、今はこんな感じでいいと思っている。
自意識も、もっと何十年もしたら2:8くらいになるかもしれないし、ずっと今の感じなのかもしれない。どっちでもいいと思っている。
30歳になってジェンダーアイデンティティが判明すると思わず、戸惑いもあった。最初の頃は、もっと早く思春期のうちに自覚できていたら…という気持ちもあったし、仮に10代の頃に選択肢を提示されても認められなかっただろうな…という気持ちもあった。恋愛を諦めきれずなんとか恋愛出来ないか足掻いてみたり、恋人はいらないからセックスフレンドを作ろう!と思ったかもしれない。
30歳で自認したから「じゃあもう恋愛もセックスも結婚も考えなくていいんだ」と素直に思えたんだと思う。コミュニティを探してみてもユース向けが多く、年齢的な疎外感を感じる時もある。でもSNSをしていると、意外と同世代っぽいアロマンティック当事者もいたりする。私は仲間がほしい!と思うタイプではないから「あ、いるんだ〜。なんかそれだけで心強い感じ〜。嬉しい〜」と思うだけで接触しようと思わないけど、存在を示す意味を感じるのでSNSではアロマンティックを名乗っている。
また来年、AceWeekの時期に振り返りを書いてみようと思う。
1年で自認が全然変わっているかもしれないし、たいして変化がないかもしれない。
でもこの記録が自認や自覚の助けになると思うし、読んだ誰かが何かを考えたり気付いたりするきっかけになるかもしれない。
なにより、ここに30代のアロマンティック当事者が存在することの証明になる。
おしまい。またね。
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